日本南大洋生態系研究プロジェクト Japanese joint Research
on East Antarctic Ecosystem STructure
(JR-EAEST)

南大洋の生物ポンプ

南大洋は、海洋が吸収する二酸化炭素の約40%を担っていると見積もられています。海洋による二酸化炭素の吸収は、表層で植物プランクトンが光合成により固定することで、大気よりも海洋の分圧が小さくなることで生じます。しかし、大気―海洋間における二酸化炭素の交換は比較的遅く、平衡に達するまで数ヶ月を要するため、植物プランクトンが固定した炭素が深層へ隔離されるプロセスが重要です。この炭素隔離のうち、生物を介して起こるものを生物ポンプと呼んでいます。生物ポンプは動物の鉛直移動行動やマリンスノー、動物プランクトンの糞粒をはじめとする、大型で沈降速度の大きな粒子によって効率的に駆動されることが知られています。南大洋の生物ポンプはマリンスノーの他、ナンキョクオキアミやサルパといった大型の動物プランクトンと密接に関係していると考えられてきました。しかし、上述されているように、ナンキョクオキアミやサルパの分布は非常に大きな偏りをもち、それらの存在量が非常に小さい海域が広大なエリアに渡っています。南極海での生態系研究はナンキョクオキアミを鍵種として行われてきた経緯があるため、それ以外のエリアの情報が不足しているおり、生物ポンプについてもその全体像が不明のままです。また、研究観測の多くは春―夏に集中しており、海氷に覆われる秋―冬については分からないことだらけです。

我々はこのような背景からナンキョクオキアミの少ない海域をターゲットとし、様々な専門家の共同研究のもとで、生態系構造と生物ポンプの関係について研究を進めています。KARE22の航海では季節海氷域で大規模な係留観測(一年間海底から立ち上げた観測機器を使用して行う観測)を予定しており、秋-冬を含む周年の時系列データ取得を目指します。これによってオキアミ依存症でない生態系と生物ポンプの関係の理解が飛躍的に進むと期待しています。

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