日本南大洋生態系研究プロジェクト Japanese joint Research
on East Antarctic Ecosystem STructure
(JR-EAEST)

海氷と南大洋生態系

南大洋(南極海)は冬季、およそ2000万m2の面積が海氷に覆われます。この面積は南極大陸よりも広く世界の海のおよそ10%を占めます。一方夏になると、この面積の80%以上の海氷が融解し、海面が現れます。この毎年繰り返される季節変化は南大洋の生態系にとってきわめて重要なイベントとなっています。
 海氷は、融解する際に氷縁ブルームと呼ばれる植物プランクトンの大増殖を起こすことがあり、この一次生産に依存した多様な生物の存在が知られています。また、この海氷の下にはアイスアルジーと呼ばれる植物群集が付着したり、海氷底面の複雑な構造を利用して甲殻類や魚類が生息したりと、意外と生物の宝庫となっています。さらに、この氷の中にまで、細かい隙間を利用して微小な生物が生息していることも知られています。これらの生物群集は総称してSea Ice Biota(SIB)などと呼ばれます。
 海氷中のSIBは、秋から冬にかけて、大陸近くの沿岸ポリニヤと呼ばれる海域で海氷が生成される際に氷の中に取り込まれたあと、海流や風で氷とともに北へ流されて南大洋を覆っていきます。そして今度は春から夏に、海氷が北側の氷縁から順に融けていくとともに、海の中に放出されることになります。放出されたSIBは、たとえば他の動物プランクトンに食べられるのか、そのまま深い海へ沈んでいくのか、あるいは深い海まで沈んでいくのか、そしてその量はどれくらいなのかなど、ほとんど分かっていません。
 そのような現状ですが、我々はSIBの研究を行うために毎年海氷を採取し、SIBの多様性について研究するほか現場でSIBの培養実験なども行っています。その結果、海氷中の生物がきわめて高密度で分布し、少なくとも一部の種については海氷生成後から数ヶ月経ってからも海氷中で生きていることなど、徐々に明らかとなってきています。

海氷中から見つかった微小生物。上から珪藻類(撮影:高橋啓伍)、有孔虫(小島本葉)、カイアシ類ノープリウス幼生(長谷川拓海)

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